志水×香穂子
織姫と彦星は、今年こそ逢えますか
遅ればせながら七夕話。
短いです。
短冊に願い事
"織り姫と彦星が逢えますように"
七月七日。
梅雨明けもまだの日本列島は、未だじめじめむしむし。
厚い雲が広がって、晴れでないと逢えない噂の二人は、今年も逢えそうにない。
「かわいそうになぁ。」
そう呟くと、私の彦星は隣でこっくりと頷いた。
「一年に一度きり、それも晴れてないと逢えないなんて、かわいそうですよね。」
桂一くんは眠たげな瞳で空を見上げた。
「今日も雨、降りそうだな。」
傘が手放せないこんな季節。二人はもう何年逢っていないだろう。
隣に桂一くんがいることが自然になってからしばらく経つ。
毎日一緒の登下校。
右手には私のよりもおっきな左手。
平日はもちろん、土日だってほとんど一緒にいる私たち。
一年も
二年も 三年も逢えないなんて
想像して、苦しくなった。
「逢えますよ。」
右手がぎゅっと握られた。
桂一くんは、空を見たまま。
「逢えます。」
そう言い切る桂一くんは、なんだか頼もしかった。
「そうだね。逢えるよね。」
空が少し明るくなった気がした。
「もしも逢えなくても、大丈夫だよ。」
遠く離れても
「信じてるから。きっとずっと愛してる。」
気持ちが離れる事なんてないんだよ、きっと。
「…そうですね、ずっと。」
ぎゅっと握られたこの手が離れる事なんて、きっとない。
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