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奏。-かなで-

金色のコルダ二次創作サイト

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2009.04.24 Friday 00:00 月森×香穂子

handkerchief

月森×香穂子

きっかけのお話


第一セレクション準備期間




コンクールなんて、やっていけるのかなって、思って。



※誕生日のかけらもないお話ですが、お誕生日記念として書いてみました。






困った。
 


日野香穂子、華の高校二年生。

どこかに携帯を落としました。
 

何が困ったって、思いあたる点が多すぎること。
数日前に妖精なんてメルヘンなものを見てから、校内中でヴァイオリンを弾いては駆け回り弾いては駆け回りしてるものだから、どこに落としてきたのか全く見当もつかない。
 
しかも下校時刻まであと10分を切っていて、今日中に我が愛しの携帯ちゃんに逢うのはほぼ絶望的。
誰かが拾ってくれることを祈って公衆電話から携帯を鳴らしてみても、数秒後に留守電に繋がるだけ。
マナーモードに設定していた自分がとにかく憎らしい。
 
あああもうほんとにどこから探そう、なんて限りない絶望に打ちひしがれながらうろうろしていると、タイムオーバーを告げるチャイムが無情にも鳴り響く。
 
「ほんとにもう、嘘でしょ…」
それ以外の言葉が浮かぶこともなく、事務室に紛失届を出してとぼとぼと帰路につく。
 


徐々に明るさを失う空を眺めながら、気持ちがどんどん落ちていくのを感じる。

ヴァイオリンなんて触ったこともないし、クラシックに至っては殆ど聴いたこともないようなものなのに、突然学内コンクールに参加させられて。

普通科からの参加で、魔法のヴァイオリンとはいえさして上手くもない演奏ともなれば音楽科に嫌みを言われるのは当然。
 


弱音吐くのはまだ早い。


まだ始まったばかりなんだから。
 
だけど

だけど
 

堪えなくちゃ
涙は 一度溢れたら止まらない



「日野さん」
 
聞き慣れない男性の声に、振り返った。
涙がでる寸前。多分とてもみっともない顔。
この人にだけは、見られたくなかった。
 
どう話しかけても冷たい対応をとる、コンクール優勝候補、月森蓮。
 
こんな顔、どんな嫌みを言われるかわからない。
この状況で"コンクールの質を下げないで貰いたい"なんて言われたら多分立ち直れないだろう。
 
「よかった、探していたんだ」
月森くんは相変わらずの生真面目な表情を変えずに、そう言った。
 
あまりに予想外な言葉。
こっちは泣く寸前だってのに、なに言ってるんだろうこの人。
 
「これは、君のだろう?」
 
そう言って鞄の中から取り出したのは、すっごくすっごく見覚えのある、手のひらサイズのモノ。
 

…彼が取り出したのは、紛れもなく私の携帯電話。
 

「あああああッ」
自分でもびっくりするほどの大きな声が出て、月森くんの肩もびくっと揺れた。
「探してたの!どこにあった?」
でもそんなの気にするよりも、ほとんど諦めていた探し物が目の前にあるってことが嬉しくて、今にも抱きつきそうな勢いで(これが冬海ちゃんだったら絶対ハグハグしてる)月森くんに問いかけた。

「練習室のピアノの下に…。バイブが鳴っていたから気付けた。」
「そっかぁ…携帯鳴らしてみてよかったぁ!」

月森くんから携帯を受け取って、公衆電話以外からは着信がないことをチェックする。

「本当にありがとね、月森くん!」
「いや、そんなに大したことは…」

ふいに月森くんは目を細めて、すっごく優しい顔をした。
 
「そんなに困っていたとは思わなかった。」
 
笑ってる月森くん 初めて見た。
 


「あ…うん、なんか落ち込んじゃって…。」
「落ち込む?」

月森くんは少し目を丸くして、私の言葉を促した。
 
「あ、携帯依存症とかじゃないよ、ちょっときっかけになっただけで」



明るさを失う空
沈む心


「ただ…コンクールなんて、やっていけるのかなって、思って。」
 

張り詰めていたこころ

ちょっとはじけば 簡単に千切れる
 

「ごめん、こんな話、困るよね」
 
言いながらボロボロ涙がこぼれる。
必死で拭いながら、笑顔を作って、さよならを言おうと彼を見る。
 
「やりたくないのか?君は」
私より先に、月森くんが口を開いた。
 
「…え?」
 
「君は普通科だし、何かと風当たりも強いだろう。
 …だが、選ばれたのは君だ。他の人間の言うことを気にする必要はないんじゃないだろうか。」

月森くんは言葉を選ぶように、ゆっくりと言った。
 
「俺は、同じヴァイオリニストとして、君の演奏に期待している。

…頑張ってくれ。」
 
差し出されたのは、綺麗に折り畳まれた白いハンカチ。
 
「あ…りがと…」
戸惑いながら受け取ると、月森くんは一瞬だけ微笑んだ。
すぐにいつもと同じ生真面目な表情に戻って、「じゃあ、俺はこれで」と私に背を向けて先を歩いて行く。
 


私は呼び止めることも出来ずに、突っ立って月森くんの背中を見送った。
 
…だって、私の手には月森くんのハンカチが握られてて、あの冷たくて無愛想な月森くんに、私は、
「…励まされちゃっ、た…。」

あの笑顔に惹かれて、そういう流れに持ち込んだのは私だけど、困った顔して、" やる気がないなら辞退してくれ"とか言われるのが関の山だと思っていたものだから、ただただびっくり。
 
なんだ、そんなに冷たい人じゃないんじゃん。
携帯も、わざわざ届けてくれたし


月森くんの背中が見えなくなった頃、私は頬に取り残されていた涙を拭った。
アイロンもしっかりかかった彼らしいハンカチは、月森くんのにおいがする気がした。




+++++

月森くん誕生日おめでとう!
全然誕生日関係なくてすみませんorz


ありがとうございました!
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