金色のコルダ二次創作サイト
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「どいて先生ー――っ!!!」
なにやら楽譜を読み走り回り、楽譜を読み走り回りしていると思ったら、
日野は俺に向かって突進してきた。
どけ、と叫びながら。
前から凄い形相で何かを探している、と思っていたが、正面で見ると、…凄い。
その形相に恐怖と身の危険を感じ即座にその場を離れると、
日野は俺のいた場所に、ひらりと華麗にジャンプした。
(バレエでもやってんのか、こいつ…?)
その飛び方はあまりに華麗でため息が出るほど。
…もうちょっと見れる表情してりゃの話だが。
跳び方は美しかったものの、日野はまるで野球選手のスライディングかと言うような着地をした。
これはこれで素晴らしかったが、せっかくの華麗なジャンプが台無し。
だいたい、制服で、ミニスカートでスライディングなんかするなよ、華の16歳。
「……。」
地面にうつぶせになったまま何も言わない日野。
「…日野?」
どこか怪我でもしたのかと、心配になって声をかける。
すると日野はむくりと、いや、のそりと起き上がった。
「せんせ…今、何時ですか?」
顔を上げずに低い声でそう俺に訪ねる日野。
俺は右手にはめた腕時計を読む。
「五時四十六分。」
そう告げると日野はがくりと肩を落とし、悔しそうに地面を叩いた。
「なんだ、ゲームでもしてたのか?」
やたら悔しそうな日野を、俺はゲームに負けて悔しがっているのかと思った。
「…いえ…。」
てっきり昼飯でも賭けて負けたのかと思っていた俺は、意外な返事に驚き、疑問が浮上する。
「…お前さん、何してたんだ?」
俺がそう聞くと、日野はのそのそと手近なべンチに座ると、
悔しさで濡れた瞳を俺に向けた。
その視線に、俺は不覚にもドキッとする。
「…ファータを、探していたんです。」
何考えてるんだ俺、と自分を制していると、日野はぼそりと喋りだした。
「あと一枚、楽譜があれば弾ける曲があるんですけど、
その楽譜を持ってるフェッロがなかなか見つからなくて―」
そこまで言うと日野は不意に俺の耳の辺りを指差す。
「―そのフェッロがそこに。」
…妖精が見えるってのは、アレだな、幽霊が見えるみたいなもんだな。
他人に見えないものを“いる”なんていうから、不気味でしょうがない。
―まぁ俺も、以前はそうだったのだが…。
「あと一歩のところで時間切れ。結局楽譜はもらえませんでした。」
しょぼんとした様子で、日野が制服についた砂を払いながら言う。
なるほど、いつもファータを探して走り回っていたんだな。
「でも、もう居場所はわかったんだろ?明日もう一度やればいいじゃないか。」
俺が慰めるつもりでそう言う。
「まぁ、そうなんですけどね。」
へへ、と日野が苦笑いする。
しかし諦めきれないようで、はぁ、とため息をつくと、いじけた様に靴で砂をいじり始めた。
「今日中にもらいたかったなぁ…。」
と、ぶつぶつ言いながら。
「ま、そういう日もあるだろ。また明日頑張れ。」
軽い気持ちでそう言いぽんと頭をなでてやる。
すると日野はビクッと一瞬揺れた。
まずいことしたか、と思い手を離す。
次の瞬間日野はすくっと立ち上がり、俺の顔を見上げたと思うと、
満面の笑みでガッツポーズをして見せた。
「頑張りまっす!」
予想外の反応に、思わず笑いが漏れる。
「あ、何ですか先生~?」
俺の反応に不服そうな顔をして日野が立ち上がる。
「ま、頑張って俺にいい演奏を聞かせてくれや。」
そういうと日野はふわりと笑い、ゆっくりお辞儀をして言った。
「私めにお任せください。」
ふざけたような声で。