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2008.10.21 Tuesday 17:12
火原×香穂子
幸せドーナツ
火原×香穂子
ほのぼの
香穂ちゃんがドーナツを買ってきてくれました。
クリスピークリームドーナツ行った記念に書きました(笑
ミ○ドとは違いましたねー、やっぱし!!
幸せなのは誰のせい?
「じゃーん、お土産です、火原先輩!」
香穂ちゃんは小さな紙袋を得意気におれに差し出した。
「ありがとう香穂ちゃん!…でも、どこに行ってきたの?」
おれは紙袋を受け取りながら訪ねた。
どこかへ旅行へ行くなんて言ってなかったはずだけど…。
「昨日都心にでる用事があったから、行列のできるドーナツ屋さん、行ってきたんです。」
香穂ちゃんはにこにこして、幸せそうに答えた。
「本当にいっぱい並んでて、一時間も待っちゃいました。」
「いっ、一時間!?そんなに苦労して買ったのに、おれがもらっちゃっていいの?」
一時間と言ったら、連続ドラマ一本分、特撮アニメ二本分。
おれだったら絶対に待っていられない。
「すっごく美味しかったから、先輩にも食べてほしくて。あ、それともドーナツ嫌いでした?」
香穂ちゃんは心配そうに首を傾げる。
「そんなことないよ!!大好き!!」
おれは香穂ちゃんを不安にさせてしまったことを後悔しながら、ぶんぶんと首を振った。
例えおれがドーナツが嫌いだったとしても、香穂ちゃんがくれるなら、きっと大好きになる。
「ありがとう、香穂ちゃん。」
香穂ちゃんがおれのために買ってきてくれたドーナツ。
ドーナツをつぶさないように、おれはそっと紙袋を抱き締めた。
ほんとは香穂ちゃんを抱きしめたいけど、恥ずかしくて、ちょっと出来なかった。
「食べようか、一緒に。」
おれは紙袋から漂う甘い香りに耐えられなくなって、袋を開ける決意をした。
「はい。なんか、紅茶でも買ってきますね。」
香穂ちゃんはにっこりと頷くと、鞄から財布を取り出し立ち上がった。
「あ、あ、ダメダメ!!」
おれは慌てて立ち上がって、ポケットの小銭の数を指で確かめる。
「おれが買ってくるから、香穂ちゃんは待ってて。」
返事を聞く前に、おれは購買へと走り出した。
ドーナツ買ってきてもらって、ジュースまで買わせたら、男が廃る。
おれは二人で食べるドーナツにワクワクしながら、全速力で走った。
暖かい午後ティーと、冷たい午後ティーふたつを抱えて、おれは香穂ちゃんのいるベンチに着いた。
「先輩、おかえりなさい。早かったですね?」
香穂ちゃんはドーナツの袋を食べやすいように広げて、おれが座る場所もばっちり確保して、あとは飲み物があればすぐにお茶が出来るってくらい完璧に準備して待っていた。
「お待たせ、香穂ちゃん。」
冷たい結露でびしょびしょになった制服を拭いながら、おれは香穂ちゃんの横に座った。
「冷たいのと、暖かいの、どっちがいい?」
ふたつの缶を差し出しながら聞くと、香穂ちゃんは少し迷ってから、暖かい方を選んだ。
ぷしゅ、と二人同時に栓を開けて、とりあえず乾杯する。
何にか、なんて聞かれても困るくらい、意味はない。
缶を口に付けると、冷たい感覚が喉にまで広がる。
走って火照った体に、冷たい紅茶は心地よかった。
「はんぶんこしない?香穂ちゃん。」
違う種類のドーナツがふたつ。
どっちも美味しそうな甘い香りを漂わせていて、どちらかひとつ選ぶのは、おれには無理そうだった。
「私もそう思ってたところです。」
香穂ちゃんはくすくす笑うと、砂糖のついたシンプルなドーナツを手にとって、きれいにふたつに分けた。
「あ、じゃあおれこっち…。」
おれは残った上にチョコの乗ったドーナツを手にとった。
そのドーナツは思ったよりもふわふわしていて、千切ろうと力を入れるとぺたっとつぶれ、チョコの部分もボロボロに崩れてしまう。
「あ、わわわ…」
なんとかちぎれたものの、切り口はボロボロだし、大きさは違うし、とても美味しそうには見えなくなってしまった。
「ごめんね香穂ちゃん、おれへたくそで…。」
ああもうおれはなんてことを。
せっかく香穂ちゃんが買ってきてくれたのに…。
おれはがっかりして肩を落とした。
「先輩ってば、そんなに気にしなくていいですよ?味は変わりません。」
にっこり笑うと、香穂ちゃんはおれがちぎったドーナツの小さい方を手にとってほおばった。
幸せそうに目を細める香穂ちゃんを見ていると、沈んだ気持ちはどこかへ吹っ飛んでしまう。
香穂ちゃんの笑顔にふわふわしながら、おれは香穂ちゃんのちぎってくれたドーナツを頬張った。
「んっ…!!」
口にした瞬間、口の中に広がる爽やかな甘み。
噛む度に美味しさが増すもちもちでふわふわの生地。
カリカリと音をたてるお砂糖。
「おいしい…!!」
おれはびっくりして食べかけのドーナツを見つめた。
「でしょ?」
香穂ちゃんは嬉しそうに笑った。
「うん、もちもちでふわふわで、さっぱりしててしつこくなくて、でもいっぱい食べたくて…!!」
おれはなんとかこの美味しさを表現しようと言葉を探すけど、うまい言葉が見つからず、結局一言を香穂ちゃんにぶつけた。
「おいしいよ香穂ちゃん!!」
香穂ちゃんはちょっとびっくりしたような表情を一瞬して、すぐに満面の笑みを見せてくれた。
最後の一口を頬張って、香穂ちゃんはおれの大好きな笑顔を見せて訊く。
「よかったら今度、一緒に買いに行きませんか?」
そんなの、断れる訳ないのに。
香穂ちゃんの誘いには、何も考えずに頷くクセがついてしまっている。
香穂ちゃんがいるなら絶対楽しいし、香穂ちゃんといられるならなんだって幸せだ。
いつからおれは、こんなに香穂ちゃんが好きになったんだろう。
悩むこともあるけど、その悩みだって、君に向かっていると思えば愛しい。
おれが幸せだ、って何の迷いもなく言えるのは、
きっと君のおかげ。
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