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奏。-かなで-

金色のコルダ二次創作サイト

2024.05.15 Wednesday 00:15

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金澤←香穂子

シリアス 切なめ


夏休み





埋まらない距離があります



ギラギラと容赦ない日差しが肌に痛い。
日焼け止めを塗ってもすぐ汗で流れるから、朝の貴重な数分間が虚しい。
とはいえ塗らずに外に出る勇気もなく、毎朝出難くなったチューブから乳液を搾り出す。

そんな季節。


「お前さん、他に行くところないのか?」

先生があきれたようにタバコの煙を私に吹きかける。
先生の城に充満しているのは、暑さではなくタバコの煙。
部屋はクーラーで寒いくらいに冷えて、先生はその中で長袖の白衣を着ている。

夏をなんだと思ってるんだろうか。

「ありますよぉ。」

顔に突進してくる煙を手でパタパタ払いながら、先生の問いに答える。

「オケ部の練習見に行くでしょ、報道部にも顔出すし…」

前に行ったのはいつだろう、なんて思いながら、”行くところ”を指折り数える。


私は夏休みだというのに殆ど毎日学校に来ている。
何しに来ている、と言われれば、ヴァイオリンの練習。
他には?と聞かれれば色々答えるけど、実際はヴァイオリンしか弾いてない。

とにかく何かアドバイスくださいって先生に付きまとってる。
ほんと言うとそのために来てる。

迷惑だろうとは思うけど、私には他にどうアピールしたらいいのかわからない。
相手が相手なだけに、誰かに相談するわけにも行かなくて。


「暇な女子高生がいたもんだなぁ」

もくもくと宙に昇る煙を眺めながら、先生がニヤリと言った。

「構ってくださいよぅ。可哀想な女子こーせーに。」

先生はくくく、と笑ってタバコの火を消した。


仕草の一つ一つに、見惚れてしまう私がいる。

さりげない自然な仕草は、彼が大人なのだと気付かせる。

歳、いくつくらい離れてるのかな。


「ほら、弾いてみろよ。真面目な音楽教師が聴いてやる。」

「いつも仕事サボってる音楽教師に聴いてもらお~っ」

何を言うかっ、と怒った顔を作る先生を尻目にヴァイオリンを構える。




彼が好きだと言った曲を一生懸命練習するあたしは、なんだかばかみたい。

その練習を先生自身に聴いてもらうのは、もっとばかみたい。

だけどこの曲を弾けば、先生は微笑ってくれるから。
あたしに、微笑いかけてくれるから。


”お前さんの弾くユーモレスク、好きだよ”


もう一度聴きたい



音楽準備室を出ると、部屋がいかに静かで涼しかったかわかる。

扉を開けたとたん大きくなるセミの鳴き声とともに、ジリジリと音を立てるような暑さが私を襲う。

廊下に蔓延する夏特有の気だるい空気に、その場にしゃがみこみたくなる。


演奏が終わって、先生の感想を聞いたら、私がいる理由はなくなるから。
先生も仕事があるらしくて、準備室を出て行かざるを得なくなる。

そのたびに、私がただの生徒であると自覚する。


もし、私が”生徒”じゃなかったなら

理由なんてなくてもそばにいられるのかな





”仲のいい生徒”


抜け出せる日は来ますか?



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