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奏。-かなで-

金色のコルダ二次創作サイト

2024.05.15 Wednesday 19:24

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2008.12.21 Sunday 14:25 柚木×香穂子

きみとマフラー


柚木×香穂子

切なめ あまあま?


ぼろぼろ涙がこぼれるのは、マフラーがうまく行かなかったからじゃない。


何気にクリスマス話。
突っ込みどころ満載ですがそこはスルーの方向で(…






「楽しかったですね!クリスマスパーティー!」

お友達有志によるちょっと早いクリスマスパーティーは大成功に終わって、
数時間が本当にあっという間に過ぎた。

「はしゃぎすぎだよ、お前は。」

もう零時近くだったこともあって、私は柚木先輩に家まで送ってもらうことにした。
…と言っても、先輩が一緒のときは、だいたいいつも送ってもらっちゃってる。

ふかふかの高級車に乗れて嬉しいんだけど、歩かないから太りそうで、ちょっと怖い。


「だって、クリスマスですよッ」

誰もが心踊らすクリスマス。
一歩町に出ればどこもかしこもクリスマスムード一色で、

聞き慣れたクリスマスソングになんだかわくわくしてしまう。

「みんなで集まったの久々だし、嬉しくて!」

先輩は呆れたような顔をして笑うと、近くのベンチに座った。
私も荷物を外側において先輩のすぐ隣に腰掛ける。

12月の深夜、公園はすっごく寒い。
車を待つ間、どこか屋内に入ってもよかったんだけど、
そうしなかったのは至る所に施されたイルミネーションがきれいだったから。
先輩はすごく呆れたような顔をしたけど、こうして一緒に歩いてくれる…きれいにイルミネーションが見える場所に座ってくれるから、やっぱりすごく優しい人だなぁと思う。

他愛ない話をしながら、白くなる息を眺める。
マフラーに顔をうずめれば、自分の湿った息が顔にかかってあったかいやら気持ち悪いやら。
マフラーで無理やり指先を暖めて、視界の端に映る紙袋への後悔をごまかす。

…やっぱり、持ってくるべきじゃなかった。

「香穂子、コーヒー買ってきてくれる?」

ふいに先輩が煌びやかな木々の間で負けじと煌々と光っている自販機を指差して言った。

「へ、コーヒー?」

「そう、ブラックコーヒー。」

先輩は自分の財布から240円を私に渡して、お前も好きなもの買ってこい、と買いに行かせる気満々。

「こんな時間にコーヒーなんか飲んで平気ですか?眠れなくなっちゃいますよ。」

悔しいことに先輩にパシリにされるのはよくあること。
私の分まで買っていいみたいだし、別に文句はないけど…。

「ほら、いいから買っておいで。
車が来る前に。」

先輩は私の忠告なんてお構いなしにコーヒーが飲みたいらしい。

「はいはい、ブラックコーヒーね。」

私は預かった240円を握り締めて自販機に向かった。
…てか、先輩120円のコーヒーなんか口に合うのかなぁ…。



香穂子が小走りで自販機に向かうのを見て、急がなくていいのに、と笑みがこぼれる。

寒そうにマフラーに指先を突っ込む香穂子を見てしまっては、そのまま放っておくわけにいかない。

自分で買いにいかないのは、何が美味しいのかわからないから。
こんな時、少しだけ自分が情けなくなる。
…ほんの少し、だけどな。

香穂子は自販機の前に立って、どれを買おうか迷っている様子だ。

二台隣接した自販機の前をうろうろする香穂子を眺めていると、ガサッと何かがベンチから落ちた。
見るとそれは香穂子が持っていた紙袋で、安定しない場所に置いたために落ちたようだった。

大事そうに持っていたし、今日誰かに貰ったんだろう。
それをこんな不安定な場所に置くな、と半ば呆れながら拾い、
落ちたときに飛び出てしまった中身から砂を落とそうとはたく。

ふかふかの肌触りのそれは毛糸で出来ていて、支えている左手が早くも暖かい。


間違いなく、保温効果抜群の手作りマフラーだった。


冬海さんか?
手作りマフラーなんて乙女チックな…。

つい興味本位でマフラーを眺めて、自分の推測が間違っていることに気付く。

よく見ると編み目が不揃いだし、よく見なくてもかなりよれよれしている。
彼女がこんな下手なマフラーを編むとは思えない。

そうすると誰だ、香穂子にマフラーを編むような…


加地葵?


確かに彼は香穂子に明らかな好意を抱いているし、マフラーくらい編むかもしれない。
なんでもソツなくこなしそうな加地が、こんな不格好なマフラーを編むとも思いがたいが…。

一度抱いてしまった疑いは、なかなか拭い去れない。


もし、もしもこれを編んだのが加地だとして、いやしなくても、
香穂子はこれを誰かに貰って、それを大事に持っていた。


ちくちくと胸を刺す、不安と、嫉妬。

そんな訳がないと、わかっているのに。


袋の中に小さなカードがあることに気が付いた。

ざわめく胸を必死に抑えつけながら、いけないと知りつつもカードを取り出す。

そこに書かれていたのは…


「ああああああああ!!!!!!!!!!」


突然の絶叫に驚いて顔を上げると、
そこにはコーヒーとおしるこの缶を抱えた香穂子が立っていた。

「ななななに勝手に人の荷物見てるんですか~っ」

香穂子は顔を真っ赤にしながら、
ブーツのかかとをカツカツ鳴らしてこちらに走ってくる。

「不安定なところに置くのが悪い。」

いつものクセで、考えるよりも先に言葉が出る。

だが、もう一度カードの中身を確認して、俺は笑いが堪えられなくなる。

「ぷっ、くくく、あはははは」

香穂子はきょとんとした顔をして、首を傾げた。
だがすぐに目を光らせて、まだ笑い続ける俺から、
今がチャンスとばかりに紙袋を奪おうとする。

しかし俺はそれをかわして、ようやく収まった笑いを顔にだけ残して、
香穂子に訊いた。

「これ、おれに渡すつもりだったの?」

そう、カードに書かれていたのは、"香穂先輩へ"でもなく"日野さんへ"でもなく、
"柚木先輩へ"
だった。


笑いと一緒にこぼれたのは、安心と、嬉しさと、自分に対する嘲笑。


「そう…です、けど…っ」

香穂子は顔を真っ赤にして頷いて、悔しそうに呻いた。

「やめたんです。
あまりに不格好だから…」

おれから目を逸らすようにして。
悔しい、という感情を露わにして。

そんな姿に、自分の頬が緩むのを感じる。
まったく、我ながら性格が悪い。

「そうだね、確かに下手だ。」

びくんと香穂子の肩が揺れる。

「う…」

わざとらしくマフラーを眺めて、
笑みを浮かべないように、なるべく不機嫌そうに声を出す。

「毛糸だって安っぽいし」

「ううっ」

「おれがつけるには、地味すぎるデザインだし?」

「いらないなら返してくださいっ!」

香穂子は真っ赤な顔をますます真っ赤にして、おれからマフラーを奪った。

「やめたって言ったでしょ?」

自分の体でマフラーを隠すようにおれに背中を向けて、
後ろ姿からでも、マフラーをぎゅうっと握り締めていることがわかった。

「ぶさいくだし、安い毛糸使ってるし、先輩には、似合わないもん。」

肩も、声も、震わせて



似合うわけがない。
すっごいへたくそだし。
デザインもなにもないような、ただの長い布だし。
きっと暖かくもないに決まってる。

先輩がつけるんだから、カシミヤとかで出来てて、
しつこくないけどすっごくおしゃれなデザインで、もちろんすごく暖かくて。


ぼろぼろ涙がこぼれるのは、マフラーがうまく行かなかったからじゃない。


マフラーと自分を重ねてしまったから。


名家のお坊ちゃんと、どこにでもいる庶民の私。
先輩は文句のつけようのないくらい整った顔立ちをしてるけど、
私は特別可愛いってわけでもなくて。

似合うわけがない。
似合うわけがないんだ。



「今更だな。」

先輩の声をすぐ後ろで感じた。
振り向く間もなく私の肩には先輩の腕が回されていて。

「もう俺は、見つけてしまったんだから。」

耳元に感じる熱い息。
私は後ろから抱き締められていた。

「似合わなくても、好きだよ、俺は。」

先輩は白くてきれいな手で私の手ごとマフラーを包んだ。
壊れやすいものを触るように、とても優しく。

「だから、ねぇ。
これおれにちょうだい?」

先輩が言っているのは、マフラーのこと。だけど。
なんだか私は、嬉しくて嬉しくて涙が止まらなかった。

「さっきはごめんね、いじめすぎたね。」

先輩はうんと優しい声で、心からの声でそう言って、
私の涙を拭うように、目元に小さなキスをした。

とたんに思い出したように私の心臓が暴れ出す。
背中いっぱい暖かいのは先輩の体温で、
耳元がくすぐったくてしょうがないのは先輩の熱い息。

突然耳に柔らかな何かがちゅ、と音をたてて触れた。
びくんと体が小さく跳ねて、みるみる顔が熱くなる。

くすくす、という先輩の笑い声と一緒に、耳元を風が通り抜けてくすぐったい。

「可愛いね、香穂子は。」

そう囁く先輩の声は、ぞくぞくするほど色っぽくて、
こんな密着した状態が長く続けば、こっちがどうにかなってしまいそうだった。

「…わ、私はプレゼントじゃないですよ?」

そろそろお迎えの車が来る頃なのに、私を離そうとしない先輩に言う。

「何を言うかと思えば…
当然だろう?」

呆れたため息が私の耳をくすぐる。
先輩が何かしゃべるたび、いや、しゃべらなくても、
息が耳をくすぐってしょうがない。
あなたいったい私をどうしたいの?って言いたくなるくらいに
私の心臓はどきどきと暴れまくる。

先輩は長い髪を私の肩から垂らして、唇が触れそうなくらいの耳元で、
当然の事を言うように囁いた。

「お前はもう俺のものになっているだろう?」









びっくりして抗議する間もなく、先輩は抱擁を解いた。

突然舞い戻った背中側の寒さに驚く私に、
先輩は何事もなかったような平然とした声で車の到着を報せた。

「ほら、行くよ香穂子。」

にっこり笑う先輩の首には、
私が握り締めていた筈のマフラーがいつの間にか巻かれていた。

つやつやでさらさらの長い髪を揺らして車道へと歩く先輩の後ろ姿に、
やられてばかりのような気がして悔しくてあっかんべをする。

それに気付いてか気付かずか、先輩はこちらを振り返った。

イルミネーションが逆光になって、髪の毛がきらきら光る。
優しく微笑むそのきれいな人は、私が作ったへたくそなマフラーを巻いていた。

「先輩こそ、私のものだよ」

私は本人には聞こえないようにそう呟いて、先輩の隣へと歩き出した。
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